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2人が別れたのは何時頃だっただろう?
夜明け間近の3時か4時か、朝もそれほど遠くない時刻だったと推測される。
翌日は朝から忙しかった。
病院と、研究と、誠二は駈けずり廻った。
そしてその夜、疲弊した体で湯船につかる……。
睡魔が静かに忍び寄る。
浴室は完全な密室状態ではなく、ガス給湯装置の下でちゃんと炎をあげて燃えていたのだから、ガス漏れの度合いもそれほど激しくはなかっただろう。
目が醒めていたら、異常に気がついたに違いない。
しかし、前夜からの疲労が、誠二を深く深く眠らせた。
漏れ出た微量のガスは、その間、音もなく室内に充満し、誠二の肺に染み込む。
湯船の温度の上昇に目を醒まし、あわてて湯船を出るが、もう遅かった。
一酸化炭素中毒は、まず運動中枢を犯すと言われている……。
誠二はタイルの上に倒れ込み、失せゆく意識の中で自らの死を知ったのだろう。
“菱形の空間”で聞いた女の裸形と、前夜垣間見た女の恥美。
めまぐるしく重なって脳裏に交錯して……。
アイコとしても、誠二の死後に、薄々、そのへんの事情を察したのかもしれない。
誠二との一夜をことさらに語らないのは、『自分が彼を疲れさせた』という、うしろめたさがあったからではないだろうか。
お墓にはいらっしゃるの?と聞いた彼女の質問には、自分はよく行っている。という意味が込められているのかもしれない。
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