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あの夜は、結局何軒ハシゴしただろうか?
全部、誠二のおごりだった。
翌日は、昼近くまで誠二のマンションで眠っていた。
洗面所で、鏡の前に立ちながら、誠二がネクタイを締めている。
「なぁ、俺の受け持っている患者の容態が急変したらしい。今からちょっと行かなくちゃならない」
「なんだ。今日は休みで、付き合ってくれるんじゃなかったのか」
と、優太郎が布団から首を出して言うと、
「すまん。何時の電車で帰る?」
「えっと‥‥確か20時台後半の電車で帰る予定だったんだが……」
「そうか、じゃぁ夕飯を一緒に食おう」
「それまでどうしてたらいい?」
「うーん‥‥中華街はつまらんし、桜木町もなぁ……。そうだ、確か鎌倉のほうに混浴温泉があったっけな」
確かに、宿酔が体のあちこちに残っていて、風呂にでも入りたい気分だった。
「そんな、いきなり行って入れるもんなのか」
「あぁ、昼間からあいてるはずだ。行って来いよ。話のいいタネになる」
「じゃぁ行ってみるよ」
優太郎は、誠二から温泉の場所を聞くと、また布団を頭の上まで引いた。
カーテンから零れる日の光が眩しい。
「夕方ぐらいには終わると思うから、電話するよ。携帯はつながるようにしといてくれ」
「わかった」
誠二はそそくさと出て行った。
優太郎はしばらく布団の中にうずくまっていたが、目はもうほとんど覚めていた。
枕もとにあったリモコンに手をかけ、テレビをつけると、緩慢な動作で身を起こした。
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