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「あっ……」
その時である。
かん高い小さな声が響いて、若い女の子が、母親らしい女性と、弟らしい幼い男の子と一緒に現われた。
歳は16、17ぐらいだろうか。
その女の子は浴場のほうが混浴になっているのを知らなかったのかもしれない。
中へ入ってみれば、男が湯船につかっている。
しかし、母親も弟も一向に無頓着である。
一旦は驚いたものの、彼女自身も『それほど驚くことではあるまい』と考えたのだろう。
タオルを体の前に長く垂らしたまま湯船に近づいた。
贅肉のない若い肢体は、細く真っ直ぐにに伸び、肌は水を弾くように滑らかな小麦色である。
些か狼狽したのは、むしろ優太郎のほうであった。
しかし、なにはともあれ好奇心の赴く眺めである。
優太郎はそのまま、ぬるい湯船に身を沈め、ゆっくりと鑑賞することにした。
彼女は格別に優太郎を意識しているふうな素振りは見せず、次第に温度の移る湯船に弟と共に飛び込んで、子どものようにはしゃいでいたが、それでも長いタオルを体の前から動かそうとしない。
その防御の堅さは優太郎の瞥見を許そうとさえしなかった。
─まぁ、あんな若い女の子が来ただけでも、運がよかったかな…─
と、あきらめるよりほかにない。
だか、タオル一枚の防御力には、おのずと限界があった。
彼女が湯船から立ち上がったとき、スッと後ろ姿が目の前に映った。
彼女の足はしなやかで細く、背後から見た太ももは形よく膨らみ、それが臀部に続く上限のところで少し内側にくぼみ、そのくぼみと太ももとの間に、小さな“菱形の空間”を作っていた。
湯船を出る彼女は、スックと体を前にかがめた。
すると、その“菱形の空間”のほんの間隙から、かすかに‥‥本当にかすかに、淫靡な部分の褶曲が窺えた。
熱い血が一気に走り抜ける。
思いがけないところからほのかに覗いた“菱形の空間”のさらに奥。
その印象は、優太郎にとって鮮烈なものであった。
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