星になったあいつより愛を込めて

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優太郎たちが寮に到着した時には、寮の掃除などを受け持つおばさんが一人いるだけで、遺体はすでに、誠二のマンションの方に運ばれたあとだった。 優太郎は寮のおばさんに許可をもらうと、浴室を覗いてみた。 どこといって変哲もない。 寮の小さい風呂場である。 つい何時間が前に、一人の男の命を……親友の命を奪った場所とは到底信じられない。 ガス給湯器はすでに警察の鑑識によって取り外され、白い湯船と、ところどころ欠けた水色のタイルだけが無造作に残っていた。 1メートル四方ほどの曇りガラスの窓の他に、全開にならないようにストッパーの付いた、換気用の小さい窓があった。 「すみません。事故のとき開いていた窓っていうのは…」 優太郎が2つの窓を交互に指差しながら尋ねると、おばさんが頷く。 「うんにゃ、両方開いとったようだでな」 その訛った感じは、なんともこの場の雰囲気にそぐわない。 コックを捻って、換気用の小窓を押してみると、7cmくらい開いて、カチッとストッパーがかかった。 その後、最初に倒れている誠二を発見した若い研修医にも話しを聞いてみたが、浴室内は少なくとも完全な密閉状態ではなかったらしい。 一通り確認し終えると、優太郎たちはすぐに誠二のマンションへと向かった。
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