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僕は再就職先を探すこともせず、毎日プラプラしていた。
言い訳は『小説家になりたい』だ。
彼女は新しい職場になかなか馴染めず、でも逃げずに立ち向かっていた。
僕は言い訳を盾にして、失業保険をもらいながら、気が向いたときに小説のようなものを書き、悦に入っていた。
誰かが粗削りの僕の才能を見出してくれて、いつか僕の書いた小説が書店に並ぶ日がくる。
そうすれば、印税で遊んで暮らせる。
なんだったらテレビに出たりして、人気が出てきたら本がもっと売れて、お金が貯まったら友達と二人で喫茶店を開いて、儲からなくてもほんの印税でまかなって....
信じられないかもしれないが、いつかきっとそうなる。こう思っていた。
まず、大前提として才能があることを疑っていなかった。
いや、疑いたくなかったから疑わなかったのだ。
彼女は前の彼氏にフラれて傷ついていた時、僕に救ってもらったと感謝の気持ちを持ってくれていた。
それに付け込み、何も言われず、何も気づかないまま1年も経とうとする頃の事だった。
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