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ピカピカとうるさいパチンコ台がぎっしりと並び、その前にオッサンやオバハンがハンドルを握りしめている。
あるオッサンは台の前に手をかざし、あるオバハンはリーチの時に手で風を起こし、数字が揃うように願い散らかしていた。
僕は財布の中を確かめた。
1万2千円入っている。
2千円。
2千円だけ打ってみようかな。
魔がさす。
よく、こういう状況をそうたとえる。
しかし、実は『魔』はさしたりしない。
ただ、人間の弱さや馬鹿な行いの言い訳に都合のいい言葉として『魔』というイメージの悪い言葉が用意されただけだ。
『魔』はさすんじゃない、すでにそこにいるのだ。馬鹿な人ほど、列の先頭に近いところで出番を待っている。
僕の『魔』はその時、列の一番前に立っていた。
きっと満面の笑みで。
僕はどの大がいいかなんてわからなかったが、とりあえず左右に人が座っていない台、海物語という台だ、を見つけて座った。
そして、僕の手から千円札がパチンコ台に吸い込まれた。
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