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「いや…余命、3ヶ月らしいです」
おどけてみせたけど、そんなものはこの人の前ではなんの意味もない。
「なん、それ…」
京さんの声は殆どかすれて出ていなかった。
かろうじて俺が聞き取れるくらいの声だった。
「なんでやの。なんで…」
目の前で崩れる京さんに、まるで立場が逆になったかのように、慰めるように触れた。
京さんの肩がぴくりと揺れて、そして顔を上げた。
夕闇の中でもはっきりと分かる、濡れた頬。
「京さん…」
泣いているんですか。
俺が、いなくなるって分かって。
寂しがって、くれるんですか?
「流鬼」
名前を呼ばれて返事をしようとした時には既に、俺の体は京さんに持っていかれていた。
玄関の硬いフローリングに、ごちっと骨があたる音がした。
それは京さんの骨で、俺はやんわりと抱き締められていたけれど。
「…痛いです」
「僕のが痛いわ」
確かに、と微かに笑ったけれど、京さんから笑みは零れない。
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