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「…入院せんの?治療は…」
ぐずる子供みたいな声で京さんが問いかけてきて、俺は曖昧に唸った。
――残りの時間を、悔いのないように過ごして下さい。
帰りがけに言われた言葉。
確かにそれが俺らしいと思ったから、敢えて生に縋ろうとは思わなかった。
「京さん。俺…残りの時間を、京さんと過ごしたくて」
京さんの腕が少しだけ緩む。
「京さんとご飯食べたり、どこかへ出掛けたり、一緒に寝たり…そういう普通の事が、したいから」
京さんは目を細めて、そか、と小さく呟いた。
「だから京さん、」
笑っていて下さいね?
3ヶ月、その間に、京さんの笑顔をしっかり覚えておきたい。
「俺が連れて行けるのは、思い出だけなんですから…」
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