近い空

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医者から渡された薬を、だるそうに口に含む。 最近の流鬼は、ぼーっとする事が多くなった。 仕事は大きなツアーが終わった後で休みらしい。 もっとも、まともに仕事出来るんか不安やけど。 「あ、京さん」 ぼーっとしていたはずの流鬼が、やたら明るい声で僕を呼んだ。 なん?とぶっきらぼうに返事をくれると、 「散歩、しません?」 にへら、と楽しげに笑いながら流鬼が言った。 「散歩?」 「はい。近くでいいんです。なんか、歩きたいなって」 歩けるんやろうか。 こないだキッチンでチャーハン作っとった時、ふらついてたんを知っとるんやで僕。 そんな体で、転ばへんやろか。 そんな心の言葉は飲み込む。 流鬼には時間があらへん。 僕は心を隠し、ええよ、と言うんや。
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