近い空

3/3
前へ
/21ページ
次へ
二人で良く歩いたいつもの公園に行こうと、立ち上がる。 おぼつかない流鬼を支え、玄関まで歩く。 薬を飲んだばかりの流鬼は、やっぱりふらふらしとる。 そうして外へ出ただけやのに、流鬼の額には汗が浮かんでいて。 大丈夫か、と声をかける前に、大丈夫です、と言われてしまう。 マンションの廊下から公園を眺めて、公園での思い出を語っただけで今日の散歩は終わりや。 …こんな、玄関の外までの散歩を、もう五回はしとる。 それでも流鬼は公園まで行こうと言うのを止めへん。 ぼーっとしとるんは、記憶が前後してたりするかららしい。 「この話前もしましたっけ」なんて笑う流鬼が、日常のどこかに張り付いてる。 なあ、流鬼。 辛いんやろ? 本当は悔しいんやろ? ならそう言うてや。 頑張らんでも、僕はぜんぶ受け止めてやんねんで。 辛いはずの流鬼が笑顔を絶やさないのを見て、僕が夜泣くのを後ろめたく思う。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加