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二人で良く歩いたいつもの公園に行こうと、立ち上がる。
おぼつかない流鬼を支え、玄関まで歩く。
薬を飲んだばかりの流鬼は、やっぱりふらふらしとる。
そうして外へ出ただけやのに、流鬼の額には汗が浮かんでいて。
大丈夫か、と声をかける前に、大丈夫です、と言われてしまう。
マンションの廊下から公園を眺めて、公園での思い出を語っただけで今日の散歩は終わりや。
…こんな、玄関の外までの散歩を、もう五回はしとる。
それでも流鬼は公園まで行こうと言うのを止めへん。
ぼーっとしとるんは、記憶が前後してたりするかららしい。
「この話前もしましたっけ」なんて笑う流鬼が、日常のどこかに張り付いてる。
なあ、流鬼。
辛いんやろ?
本当は悔しいんやろ?
ならそう言うてや。
頑張らんでも、僕はぜんぶ受け止めてやんねんで。
辛いはずの流鬼が笑顔を絶やさないのを見て、僕が夜泣くのを後ろめたく思う。
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