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この町に引っ越して来て、約一ヶ月。
一人暮らしにもようやくなんとかなれてきた。
世辞にも活発だとは決して言えないこの町の、さして有名でもない一般的な公立高校。
回りは山に囲まれて、コンビニさえも数少ない。
親戚なんて一人もいないし、当然知り合いなんていやしない。
いや…正確には、『親戚なんて一人もいなくなった』と言った方が正しいのだろう。
これまで、多くの町を、転々としてきた。
父と母が交通事故で他界して以来、色々な親戚をたらい回しにされたのだ。
では、なぜ今回親戚が一人がもいないこの土地に、しかも一人暮らしでやって来たのか。
答は簡単だ。
ここに住んでいた唯一の親戚が、住んでいた一軒家を残して他界した。
残されていた一軒家を、僕を預かってくれていた親戚が管理することになり、無理を言ってそこで一人暮らしをさせてもらった。
もっとも、今の言い方には多少…いや、かなり大きな語弊がある。
正しくは『無理を言って』ではなく、『二つ返事で』が正確だろう。
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