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「?何の話をしているのかな。」
「別に、恋がいつも可愛くて完璧な女の子だなって思ってただけさ。」
「ほぇ?
…も、もうライ君ったら、いつもそう言ってごまかすんだから…」
全く、こんな台詞で顔を赤くするとは、実に扱いやすい女だ。
「でもうれしいな。ライ君がそんなこと言ってくれるなんて。」
「俺はただ、客観的事実を述べただけだ。」
「もう、そんなこと言っちゃって、ほんとは照れてるくせに~。」
「腹をつつくな、うっとうしい。」
正直、このやりとりは疲れるが、同時に感謝もしている。
というのも、昔の俺は、人の区別がつけられなかった。
蟻を見るような感覚と言えばわかるだろう。
人なんて皆同じ、区別などないと思っていたのだが、この恋と交流、というか一方的なスキンシップをされているうちに、いつの間にか人の区別ができるようになっていた。
だから、恋には感謝している。言葉では足りないくらいに。
「…でも変わったよね、ライ君。
ちょっと前までは、名前すらまともに覚えてくれなかったのに。」
「ま、お前の強引なスキンシップのおかげだ、感謝してるぞ。」
「もう、強引だなんて、ライ君はいつも一言余計なんだから。
そんなんじゃ女の子にもてないぞ☆」
「台詞に絵文字を入れるな。
というか、俺がもてたら恋は困るんじゃないか?」
「えっ…それってどういう…」
「さて、無駄口を叩いていたら遅刻しそうだな、さっさと行くとしよう。」
「あ、ちょっと待ってよ~」
こうしていつもと変わらないやりとりを交わし教室に向かった俺たち。
だからだろうか、今日がこれからの俺の人生全てを変える劇的な日になるとは、俺はまだ気づいていなかった…。
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