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崩落を始める城に中、魔王を追い詰める勇者一行の姿があった。
「ゴフッ…」
よろめき背を壁に預ける。
喉を伝って吐血した。
胸には聖剣が深々と貫かれ、足下に血溜まりができる。
「…貴様等ッ」
血走った目で魔王は、目の前に佇む者達を睨みつける。
「終わりよ、魔王。
あなたの野望は潰えたわ」
直ぐ目の前に立つ一人の女が魔王の胸に貫かれた聖剣に手を掛けると、ゆっくりと奥へ奥へと押し込む。
「ガァア…!?」
耐え切れぬ苦痛に声を上げる。
傷口から血が噴き出し女の顔にも飛沫が掛かる。
女は、顔色を変えない。
光彩の消えた冷徹な目をしていた。
クソッ……
クソッ クソッ クソがーーッ!!!
込み上げる怒りに反し、意識が薄れる。震える手で女に手を伸ばすが──届かない。
(あと少し…あと少しで…!
我の野望が───悲願が!この様な結末で潰されるのか!)
冷え切った目をする女に、魔王は苦痛に歪み切った顔で叫ぶ。
「───勇者ァアアアアアアア!!!!!!!」
魔王城に響き渡った叫びは……
一時の内に世界から消え去った。
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