悪魔の生け贄

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女子5人の賑やかな声がリビングにも届いた。 既に日付が変わっているにも関わらず、元気に騒いでいる。 「ご結婚、おめでとう御座います。ケルト国王」 「あれを選んだ君は余程のドMなんだね」 「楽しそうで何よりです兄上」 突き刺さる様な祝いの言葉だ。 しかし、ソファーに腰を下ろしている若き国王は、頭を掻いて照れ笑いを浮かべていた。 「あ、ありがとう…!」 「単細胞で何よりです陛下」 「単細胞ってある意味最強だね」 「兄上が単細胞だから、巴を選んだんでしょう?」 一々グサグサと来る言葉である。 単細胞な本人は影を背負った様に落ち込んでしまった。 「それはそうと、イーマ」 「何?」 「社長になるんですって?おめでとう御座います」 にこやかな笑顔が即座に凍り付いた。 イーマは明日の方向を見つめ、不気味に肩を揺らして笑う。 「そうそう、シャムレックは日本の芸能界にスカウトされたとか。日本が大好きなんですものね。これからミタリアと日本の良さを両国へ広める事に全力を尽くしていくんですよね。実に素晴らしい事で何よりです」 シャムレックは力無く床に倒れ込んだ。 陽良子がミタリアと出会った理由を持つ人物は、必死で辻褄を合わせているものの、中身が違うので苦労していた。 「日本大好きなのはオルカなのに…」 「身から出た錆です」 沈黙。 個々に打ちひしがれているが、ヨハンだけが上機嫌である。 「私は今、何事にも捕らわれず、しかも新しい幸せが舞い込んだので、皆さんが哀れでなりません。頑張って下さいね!諦めないで!」 …と、言ったヨハンが朝方に真実を知り、発狂したのは言うまでもない。
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