思い出作りは計画的に

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事の始まりは、ヨハンの仕事先が決定し、アルフォーン夫婦が荷造りをしていた最中であった。 親友達とのバカンスは、陽良子に沢山の思い出をくれたのだが…。 「そう言えば…ヨハンとこの島で一番って思い出がない…」 箱の中に、必要不可欠なタッ●ーの写真集を隠しつつ、陽良子は呟いた。 手伝っていたリサが、何気ない陽良子の一言に便乗する。 「確か…巴はミタリア国王と婚前旅行に行ったって言ってたわね。オルカはシャムレック王子と箱根へドライブ旅行…、夏奈子は新婚旅行へ行ったって」 皆で買い物へ行って、お揃いで買ったブレスレットを眺め、リサはこう告げた。 「陽良子、所詮友達ってそう言うものだと思うの」 「何だよ…リサ、超喜んでたじゃん。ブレスレット買う時、 『やだぁ~!超嬉しい~!大切にするね!』 って言ってたじゃん」 リサ、思い出して顔が真っ赤になる。 しかし、嬉しい気持ちを隠しつつ、コホンと咳をした。 「つまり、物より思い出よ」 「…思い出は…プライスレス…」 「旦那様は、結構ガッカリなさっていたと思うの。何せ、馬の勘違いで陽良子が妊娠してると信じて、かなり喜んでいらしたから。発狂なさったのも頷けるわ」 そう、陽良子が妊娠していると誰しも信じていて、本人が驚いた程だ。 否定したあの日の朝、ヨハンは見事に落ち込み、雲隠れした天馬への怒りをソファーにぶつけた。 あの重そうなソファーを持ち上げ、雄叫びを上げながら海へ放り込み、砂浜でメソメソと涙に暮れたのである。 そんなに楽しみだったのか…と、誰しも同情した。 見事な落ち込み具合であった。 「あれから仕事人間になっちゃったからなぁー…。話し掛けられるような感じじゃなかったし」 「結局、これと言った最高の素敵な思い出は、作れず終いって事になったのね。こうなったら陽良子」 強い眼差しを向けたリサに、陽良子は首を傾げた。 そして、リサは力強くガッツポーズをして見せる。 「妊娠するしかないわ!!」 「えーっ!こればっかりは運とかじゃんよ。直ぐには無理だよ~!」
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