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片付いて、こざっぱりとした部屋で二人。
リサの焼いたクッキーを食べながら、素敵な思い出作りのプランを立てる。
暫くして、光枝がやって来ると、陽良子の着ていたシフォンのワンピースの裾にじゃれつき始めた。
それから一時間後、何時の間にかデリブまで参加していた。
三人は島の観光地にめぼしいスポットがないかと探すものの、どれも納得のいく場所は見付からない。
中々決まらず、夕御飯の時間になってしまい、キッチンに移動して尚も話し合いは続いた。
そして、デリブが何気ない一言を訊ねる。
「…海の中…等は如何でしょう?」
「海の中…か…そりぁ、綺麗な場所はいっぱいあるよ?でも…」
陽良子には、密かな願いがあった。
それは、ヨハンが気分転換にと連れ出してくれる空にある。
眼下に広がる壮大な景色。
これは、ヨハンの能力なくしてお目にする事は出来ない。
陽良子の特等席は、ヨハンの腕の中だ。
色々な景色を見せてくれるヨハンだが、逆に陽良子の能力はヨハンに何一つ与えられない。
海の中では、ボンベ無しに息をする事は不可能である。
「ボンベがあるじゃない」
と、陽良子の悩みを一蹴したリサだったが、デリブが察して口を出した。
「煩わしい物が、奥様には許せないのでしょう?旦那様が奥様になさる事と同じ方法で、旦那様を案内なさりたいのでは?」
正にその通りだ。
陽良子は能力を使い、何者にも邪魔されない海を満喫してもらいたいと思った。
ボンベは何より、身体の自由を奪うからだ。
「じゃあ…陽良子の能力で何とかならないの?」
「それが、私の力を持ってしても、私以外の生き物には海の中で空気を与える事が出来ないんだよねぇ」
水圧の調整は可能だ。
しかし、一番重要な空気を海へ持ち込む事は出来ない。
もし、ヨハンが海の中で息が出来るのであれば、見せたい場所が沢山ある。
叶わないと分かりながら、陽良子はその考えを捨てる事が出来ず、悶々と悩んでしまった。
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