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耳の奥に、心地の良い歌が響く。
寝返りをうって、柔らかくて暖かい「何か」に包まれている事に気付いた。
「うーん・・・」
ずっと眠っていたい。
こんなに肌触りがいいお布団で、起きるなんてもったいない。
そう思う別の頭は、「何かおかしい」と湧く。
目を擦り、薄らぐ視界に映ったのは・・・。
『あら、おはよう』
こちらを覗く、銀色の瞳。
それも、ドアップで。
『うひぁっ!』
驚いて飛び起きると、クスクスと笑う大きな犬が起き上がった。
どうやら彼女の懐で眠っていたらしい。
ズルリと動いた下半身は、目にも鮮やかな金色だ。
静かなドーム型の空間はほんのりと明るく、光る蛸が優雅に竪琴を奏でている。
空間の周りには、摩訶不思議な青白く光る水母が群がっていた。
そんな場所で一人、大慌てで陽良子は土下座。
『貴女が居ると、やっぱり賑やかね』
上半身は真っ白な毛並みをしたコリー犬のような姿。
下半身は金色に黄金の斑模様の蛇。
真っ黒な鉤爪には、かつて陽良子がプレゼントした、誕生石が埋め込まれたシルバーネックレスが、お上品に光っていた。
彼女は「マダム・レイモンド」と言う。
神様達を作り出した大元であり、陽良子を神様にしてしまったおっかなびっくりな方だ。
純真、そして無垢な創世主は、土下座する陽良子にさらっと伝える。
『涎の跡、ついてるわよ?』
創世主の懐で、涎を流し、鼾をかいていた訳だ。
陽良子は固まってしまい、その様子をマダムは腹を抱えて笑う。
『きっ、気にしないで頂戴。ほ、本当に可愛い寝顔だったわよ?・・・ぷぷぷ・・・』
さぞ、面白かったに違いない。
陽良子の行動一つ一つが、彼女には笑いのツボなのだろう。
消沈している陽良子に、『本当に気にしないで』と付け加えて、マダム・レイモンドは思いついたように身を翻した。
風が舞い、すっ飛ばされた陽良子だったが、その最中に一つ気付く。
あ、私なんでTシャツにハーパンなの?
転げた身体に手を差し伸べたのは、腰まである真っ白な髪に銀の瞳の美しい女性だ。
首にはあのネックレスと、ゴールドの緩いドレスを纏っている。
ナイスボディー!
『貴女に合わせる事にしたわ』
『壮大な変身ですね・・・』
『どうしても、こうなってしまうのよ。許して頂戴ね』
笑顔キラリ☆
いやん、マダムたらチャーミング☆
・・・これからは気をつけよ・・・。
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