思い出作りは計画的に

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しかし・・・だ。 普段なら、陽良子は人魚の姿でここへやって来るのだが、何故か眠った時の格好のまま。 白いTシャツには「だんじり祭」と達筆なロゴ。 紺色のハーフパンツは中学の頃から愛用している「土井中ジャージ」だった。 夫の魔の手から、なんとか救出している。 マダムは世界の管理者だ。 陽良子の事は勿論、世界の全てを知っている。 つまり、陽良子の悩みも。 『貴女の悩み事に、打開策があるから呼んだのよ。旦那様と、素敵な思い出を残したいのでしょう?陽良子の秘密の場所を、案内したいのでしょう?』 ああ、やっぱり・・・。 全部お見通し。 思わず苦笑してしまったが、打開策と言ったマダムの次の言葉を待って、俯き加減にその表情を覗く。 マダムは盛り上がった胸の谷間から、金色の何かを取り出して、雄雄しく天に翳して叫んだ。 『どーこーでーもーチーケーットー!』 沈黙。 陽良子は息を飲んだ。 よもやこんな地位の高い方が、青色の猫型ロボットの真似をするとは。 誰だ!マダムにこんな事教えた奴は! 『陽良子の真似をしてみましたの☆』 ですよねー! ああああぁああぁぁああああ!!すみませんでした!! 一人悶絶する陽良子に首を傾げているところから、あまり分かっていないようだ。 『貴女の力でも、どうしようもない。この世界にその方法もない。ならば他の世界ならばあるかもしれなくてよ?』 『他・・・の世界・・・?』 『そうね。言ってしまえば、貴女の住む世界の他に、別の世界があるって事よ。全く違う世界もあるし、似通った世界だったり・・・。私のように世界を創世する神様は他にもいるの。私達は繋がっていたりいなかったり』 何だか難しい話だ。 混乱していると、マダムは難しく考えるなと言う。 『いいじゃない。だって方法があるんですもの。これはね、その別の世界に行く為の鍵。そうね、パスポートみたいなものよ。これを使えば、望むものが手に入るかもしれないわ』
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