思い出作りは計画的に

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そうか・・・。 難しく考えちゃだめだ。 だって、不可能だと思っていた願いが叶うかも知れない方法があるのなら、それに縋りたい。 マダムは陽良子の悩みを解決するため、こうして貴重な鍵を手に入れてくれたのだから、甘えよう。 受け取った金色のチケットを、陽良子は胸に押し当てた。 マダムの気持ちは本当に有難かったし、これで夢を叶えることが出来る喜びで一杯だ。 『有難う御座います!!』 『いいのよ。貴女は私の大切な友達ですもの。喜んでもらえて、私は嬉しいの。プレゼントを渡すって、こちらまで幸せになれるわ。色々な気持ちをくれる貴女に、何か出来るって素敵な事ね』 友達になっただけだ。 それなのに、マダムは喜んでくれる。 申し訳なく思うと同時に、喜んでくれる笑顔のマダムを見ていると、こちらも嬉しくなってしまう。 『マダムにお土産、買ってきますね!』 『まあ、それは楽しみだわ』 と、笑いあった後、マダムは空間の境に近寄り、手を翳した。 どうやら通り道のようで、真っ暗の通路が先に伸びている。 『このトンネルをずっと歩いていけば、入り口に着けるわ。このチケットを渡せば大丈夫よ』 ちょっと不安。 けれど、ワクワクする。 好奇心もあった。 それに、望んでいた事が叶うかも知れない期待。 勇んで進み始める。 真っ暗なトンネルの先に、どんな世界が広がっているのだろうか。 少し歩いて、振り返るとマダムが何か言っているのだが、その声は既に陽良子には届かず、大きな声で「いってきます!!」と叫んで手を振った。 目の前の事だけしか見えていないというか、直進的というか・・・。 『あの子ったら・・・旦那様にちゃんと言わなくていいのかしら・・・』 取り残されたマダムは、仕方ないといった様子で仕度を始めた。 とは云うものの、ちょっと楽しみだったりもする。
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