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ここで望むものを見つけるのは至難の業ではないか。
そう不安になっていたら、先ほど陽良子を引き止めた若い兵隊さんが、お詫びといって羽の様な物をくれた。
「これを使えば、お疲れにならずにスムーズに街の中を観光できますよ!良い旅を!」
まるで大きな鳥の羽だ。
緑色の綺麗な丸い宝石に羽が生えている様な品は、踵に近づいてふわりと羽ばたいた。
「うわっ!」
身体が浮く。
地面から10センチ、これ以上は浮かないらしく、足を前に進めるとそれに従ってくれる。
疲れないし、何だか楽しい。
煉瓦の道、石畳の階段。
街には川が流れ、小船に乗って愛を語らう恋人や、果物をいっぱい積んだ船が川べりで遊ぶ子供達に林檎をサービスしている姿。
何だか幸せになる風景。
タイムスリップしたみたい。
ヨーロッパの昔って感じ?
バロック式の建物はどれも大きく、手の込んだ彫刻が柱を持ち上げているように見えて、思わず笑ってしまったりもした。
陽良子はまず、目の付いた賑やかな市場を見つけた。
思わず走り出して、ずらりと並んだ市に感嘆の声を上げる。
色鮮やかなフルーツ、新鮮な野菜や魚。
民族衣装だろうか。白の生地に可愛い模様のワンピースを見つけた。
「どうだいお嬢さん。貴女にお似合いじゃない!?良かったら合わせてみて!」
お店のお姉さんは、オレンジ色の鮮やかなワンピースを着ており、胸元には白い花を連ねた刺繍が施されていて、何とも可愛い。
陽良子が手に取ったのは、紫色のリボンに白地のワンピース。
裾には同じく紫の小さな花の刺繍が輪の様に連なっている。
可愛い可愛いとはしゃいでいたら、「ゴールドチケットのお客さんなんだね!好きなのどれでも選んでよ!」と、ただでくれると言うのだ。
何なんだ、このチケットは。
結局、お姉さんの進めもあって、気に入った紫リボンのワンピースにした。
裸足だったので、コバルトブルーの靴も。
着替えさせてもらって、お姉さんから可愛い白地のバックの頂いて、大満足の陽良子である。
「良い旅を!」
すれ違う人や商人、誰も彼もがそう言って声を掛けてくれる。
なんて素敵な世界なんだろう。
・・・いかんいかん!目的があるんだから!
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