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「あ!!あれがジールさんが言ってた看板かな」
少しばかりふら付く足取りで、陽良子は二手に分かれた道までやって来た。
森に入る手前で、何とか降ろしてもらえた。
あの鳥は・・・恐ろしい!!
いや、ジールが飛ばし屋なのかもしれない。
木々のトンネルをまっすぐ歩けば看板が見えるからと、ジールは言っていたが、気分を落ち着かせる為に少し歩いた先に見えた看板に、ほっと息を吐く。
矢印の方向を向いた看板には、奥深い森の方角に、[フローライト・フォレスト※採取・採掘・狩猟等は協会の許可証が必要です]と書かれ、道の先を向いた看板には、[ベリルズ・ホーム※お薬をお求めの方はこちらへ]、と書かれていた。
「はあー・・・良かったぁ。お薬屋さん、もう直ぐなんだー。こんなに早く着けるなんて、帰りにジールさんにお礼言わなきゃ」
これで、念願の夢が叶う。
素敵な思い出作りが、その道の先にある。
帰りもお迎えに来まっせ!と言ってくれたジールに感謝すると同時に、蘇る、あの悪夢。
『ジ・・・ジールさん!?そ、そんなに急いでませんから・・・!!だから、ゆっくり・・・』
ゆっくり走って・・・ぇえええぇええええ!!
陽良子は持て成してくれるジールに感謝はしている。
感謝はしているが・・・。
『ははっ!何言うてますの?コイツの速さはこんなもんやないで~!!』
『ぎゃぁぁぁぁ!お、落ちるっ、振り落とされるぅぅぅぅぅ!!!』
『ハイヨー!!もたもたしてると、日が暮れてまうでっ!!』
もう・・・本当にすみませんでした・・・堪忍してください・・・。
ジールの耳に届いただろうか。
嘗て、そう言ってもはしゃいでいた黄色いオープンカーで笑う夫を思い出す。
安全運転、大事!!
ああ・・・うえっぷ。
「さっきの事思い出したら・・・」
まだ気持ち悪い。
安全運転、絶対!!
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