思い出作りは計画的に

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マリーナに案内してもらい、二人で話しながら歩いた。 マリーナはお姉さんをとても尊敬しており、「お姉ちゃんのお役に立ちたい」と頑張っているという。 姉がいて、どう頑張っても「お姉ちゃんの為に頑張りたい!」と思えない陽良子には、何だかマリーナが眩しく見えた。 きっと、お姉さんが良い人に違いない。 おパンツ一丁で「陽良子~、酒取って~」等と言う姉とは、全く違う人種なのだろう。 暫く歩いた先が徐々に開け、一軒の大きな建物が見えてきた。 煙突から煙が昇り、時折小鳥達が羽ばたいていく。 木で出来た家の、いい匂いがした。 「こっちだよ」 そう言って、先走って行ったマリーナは大きな正面の扉を開けた。 おおう!ちょっと待っておくれよ! 「お姉ちゃん、ただいま!!」 カウンターで作業をしていた少女は、マリーナの顔を見て顔を上げる。 「あら、どうしたの?忘れ物かしら?」 穏やかな声色で、マリーナに話しかける姿。 まるで菩薩様のようだ。 マリーナが「違うの、お客さんだよー」と告げると、不思議そうに目を瞬く。 「え?」 慌ててやってきた陽良子は、「置いてかないでよ~」と小走りに駆け寄った。 マリーナは肩を竦めて舌を出し、「ごめんなさい」と詫びた。 かわいいから許す! もう一人、陽良子が眼にしたのは落ち着いた風貌の少女で、申し訳なさそうに頭を下げる。 「どうも申し訳ありません。マリーナがご迷惑を掛けてしまったようで・・・」 「いえいえ、そんな。私の方こそ、道案内してもらえて助かりました。・・・失礼ですが、貴女がエメロードさんですか?」 きっとそうに違いない。 快活な妹とは違い、背も高く、物腰柔らかそうな女の子だが、顔立ちの雰囲気は良く似ている。 「はい、私がエメロード・ベリルです。そしてこちらが、妹のマリーナ」 ああ、なんか優しそうな人だー。
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