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カタカタカタ…
キーボードを叩く音だけが、部屋に響いている…
【 私の横に、もう彼はいないの…
出会わなければよかった…こんな思いをするなら…
愛さなければよかった…こんなに切ないのなら…
…そう、あれは、ほんの数週間前の出来事…目を閉じて頭の中で、刻を遡れば、はっきりと、思い出せるの…甘い甘い、彼との時間を鮮明に。
あの日、初めて彼の部屋に誘われたの…。
部屋には、彼の大好きなクラシックが満ちていて、静かに、私の耳に流れ込んできた…。
ソファで、つかず離れずの微妙な位置に、並んで座っていたわ。まるで、何も知らない少年と少女の様に…
彼の手が、おずおずと、少し遠慮がちに、伸びてきて、私の肩に触れる…。
ぐっと、引き寄せられたせいで、私の頭は、彼の鎖骨辺りに、持ってこられた。
彼の体に触れている耳が、小さく速い、彼の鼓動を、響いてくる、彼の想いを、聞くの…。
どれくらいそうしてたのかな?
上から、柔らかで低い、彼の声が聞こえた。
「Kissしてもいい?」
「…うん、いいよ。」
「こっちむいて…。」
伏し目がちに、見上げる私と彼の視線が絡まる刹那、静かに、私は、目を閉じた…。
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