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「どうぞ、入って。」
開けられた扉の中に入るなり、彼は、あたしに向かって、こう言った。
「こんにちわ。原稿の進み具合どうですか?」
にこやか爽やかスマイルで、いきなり、サラっと、あたしに、プレッシャーを掛けて来やがるこの二枚目男。彼が、山河書房のあたしの担当。
「…あのさ、速水君。進んでないの知ってて、言ってるでしょ、あんた。」
「わかりますか?」
彼に、悪気は、全然ないと知ってはいても、サラっと流されると、少しだけ腹が立つ。
何度も来てるから、勝手知ったる、あたしんち。
彼は、勧められもしないのに、スリッパに履き替えて、奥のキッチンへまっすぐに歩いて行く。
「…ま、雑誌のコンセプトは、わかっていただいてる訳ですし、ちゃちゃっと、片付けちゃいましょうよ、先生。」
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