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翌朝、美結は学校の正門へ続く道を一人で歩いていた。
その道は緩やかだが少々登り坂になっている。だからなのかそれとも美結の気持ちを表しているからなのか、彼女の歩みは悪かった。
それは決して彼女が学校に行きたくないという訳ではない。昨日の事ばかりが頭の中で渦巻いていた為、他の事が目に入らないだけであった。只、毎日の習慣で学校へ来ただけである。
(もう~、何であんな事に……)
美結は心の中で昨日の失態に自己嫌悪のため息を吐いていた。
昨日智也の膝の上で目覚めた美結は、慌ててそこから飛び降りた。だがその際自分の頭を彼の顎に思いきりぶつけたのだ。
美結は智也に膝枕をされていたという恥ずかしさと、彼の顎に頭をぶつけるという失態に顔を真っ赤にした。
そして金魚のように口をパクパクしているだけだった。一言も謝りもせず。
だが智也は自分の顎よりも美結の頭の心配をし、先ほどまで気を失っていた彼女の心配をするだけだった。
(結城君には悪い事しちゃったな…… でも結城君てやっぱり優しい)
美結は昨日の事を思い考えながら笑みを漏らす。
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