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ここはラグラール王国、首都カトレアの城の中の一室。
ベッドに横たわる青年が目を細め、シャンデリアがある天井をボーっと見つめながら今日、王になる継承式のことを考えていた。
(俺は…本当に王様になりたいのか…俺は…)
頭の中で色々考えているとガチャっと部屋のドアが開き、スーツを着ていて右手のおぼんの上に飲み物を乗っけている、おじいさんが入ってきた。
この服装からして執事であろう。
執事はベッドに横たわっている青年へ静かに歩み寄り、右手のおぼんに乗っけているお茶を近くの机の上に置いた。
そのあと一礼をして
「おはようございます。フェインぼっちゃま。」
青年はフェインと呼ばれた。
髪は黒、瞳も黒く服装も黒い。
そしてそのフェインが口を開く。
「まだ俺は…おぼっちゃま呼ばわりか?」
執事は優しく微笑み
「継承式が終わったら、王様とお呼びしますよ。」
フッっと聞こえるか聞こえない程度で声を発し、執事の方へ向けていた視線が再び天井に戻る。
「今日は一生に一度の舞台です。国民の前に顔を出さなくてはいけませんが…」
最後の方で言葉が詰まる。
「……無理だな。」
フェインはため息をはきながら言った。「『あれ』は、どうしようもありませんな。『上級魔法』を使ってもダメでした。」
執事も肩をおろして弱音をはいた。
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