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時は文久二年12月
まだまだ寒さが体に
しみる季節――――
『ひゃー!冷たい!!』
いかにもお年頃の少女は小さく叫んだ。
桶に水をはり、日課の一つでもある、長い廊下の床拭きをしようとしたのだが、 想像していたよりも水が冷たく体を縮こませながら雑巾を絞って少し赤くなってしまった。
色白い真っ白な手に似合わない、タコだらけの手にはぁーっと息をふきかける。
と、すぐ後ろの部屋から
『コーウ!』
と耳に残る甲高い声で名前を呼ぶ声がした。
そして落ち着いた紺色に、白い小花をあしらった着物をきた目がキツく少しシワのあるだが決して老け込んでいるわけではない女性が、障子を少しあけ廊下を覗きこんできた。
この試衛館の元道場主である
近藤周斎の妻であり、現道場主の近藤勇の義母である「ふで」だ。
コウとよばれた淡い桃色に、桜柄の着物をきたその少女は
『はい。なんですか?』
と愛想よく振り向いて答えた。
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