八幕. 初めての訪問

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「ちょい、荷物降ろすの待ってね」 八木邸門前の手前の路脇で、引いて来た 荷車を止めた藤吉に、奈々は声を掛け、 1人八木邸の門に足を運び、不思議と静まり返る門内を窺(うかが)う。 『あれっ?やけに静かだなぁ?』 耳を澄ませてみても、奈々の元に人気が 有るような様子が、伝わって来ない。 「あのぉー、ごめんやす(ごめんくださ い)。 どなたか居(お)られまへんどす?」 門を潜り、邸内に勝手に入って行く訳にも行かず、門前から奈々は中へ少し声を張り上げ、呼び掛けてみた。 しかし、声を張り上げた甲斐も無く、八 木邸内から返って来る応えも無い。 荷車の傍(かたわ)らで、心配気に奈々を 見ている藤吉へ、困った表情の奈々が視 線を向けた。 「折角来やはったのに  どないしょ?」 奈々に問い掛けられた藤吉は、応え様も 無く下を向いてしまう。 奈々はその様子に小さくため息をつた。 「どうかされましたか、 浪士組に何か御用でも?」 背後で不意に湧いた声に奈々は驚き、慌 てて振り返った。  
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