君を意識する

2/3
1214人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
「先輩、オレ、好きな人がいるんです」 「…………何でそれを俺に言う」 「言いたくなってしまいました」 「失せろ」 野良犬を払うような仕種でそう言えば、米倉は困ったように笑う。 ああ、カッコイイな、馬鹿。 同じバスケ部で後輩の米倉。 人当たりがよく人気者。 そして俺は、そんな米倉が好きだったりする。 最初は意味がわからなかったけど、自覚してしまえば米倉ばかり意識して馬鹿みたいだ。 相手は同性なのに、とか。 誰に言うつもりもなかったけど、そんな矢先に米倉自身から好きな奴いるとか言われて、何て答えてやれば良いのかわからない。 米倉を(無理矢理)無視して、シュート練に戻る。 「先輩は、好きな人、いないんですか?」 「お前と恋ばなする気ねぇよ、男同士でキモい。黙って練習しろ。自主練する気ないなら帰れ」 「今時男子は恋ばなくらいしますよ」 「生憎、俺は今時男子じゃないみたいだな」 あぁ、くそ。 気が散って全然入らない。 米倉の好きな奴って誰なんだよ。気になって集中出来ない。ムカつく。 外れたボールを米倉が拾って俺にパスする。 あぁ、何でそれだけで意識するんだよ。俺キモい。 「先輩。今日、何か不調ですね。具合でも悪いですか?」 「別に」 「でも、機嫌悪そうですから」 「うっせぇ。別に具合も機嫌も悪くねぇっての」 「……悪いじゃないですか」 思い切り睨みつければ、米倉は困った風に苦笑する。 それがあまりにも似合いすぎて、かっこよくて、ムカつく。 何で俺ばっか意識しなきゃならないんだよ。 「練習、する気ないなら帰れって」 「ありますよ。でも、今は先輩と二人っきりだから、少し話したいなぁって」 「…………」 何その口説き文句。 そう、今は俺と米倉だけ。 すげぇ嬉しいけど、ボロが出そうで嫌だ。 絶対意識するし、落ち着かない。 「先輩のシュートのフォーム、綺麗ですよね」 「褒めても何にも出ねぇよ」 「えー、それは残念」 そうやって笑う米倉。 ダメだ、俺はこいつが好きだ。 そうやって笑うとことかすげぇ好き。ムカつく。 「あ、先輩。オレと勝負しません?」 「は?」 「シュート、5本中多く入った方の言うこと何でも聞く。なんてどうです?」 「さっき俺が不調とかどうとか言ってたくせに」 「あはは」 でも、何でも、か。 俺が勝って、付き合え、って言ったら付き合うのかよ? いや、それはねぇな。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!