飼い主が大好き

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右往左往と迷ってしまう。 けーくん、部活休みなんて滅多にないし……でも、ゆーとの奢りも珍しいし…… 「ご主人様、わんこが即決しないなんて珍しいなー」 「……龍太郎は友達想いだから、断る言葉を探してるだけだ」 「へー。三宅って、性格悪ィのな。俺の嫌いなタイプ」 「ははっ。その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」 「やべ、マジ嫌いだわー」 あれ、何か二人とも険悪な雰囲気……? 仲悪かったっけ? 「それで、龍太郎。俺は今日、スフレ作んなくて良いの?」 「けーくんの作るお菓子食べたい!!」 「じゃあ、柏木とは遊ばないよな」 「……うん」 「……おい。誘導してんだろ」 ゆーとの奢りは魅力的だけど、オレはやっぱり、けーくんのこと大好きだし。 一分でも多く一緒にいたい。 「誘導なんてとんでもない。龍太郎は俺の方を優先したかっただけだろ?」 「うわー、マジでムカつくー」 「オレ、ゆーとのこと好きだけど、けーくんのこと大好きだから、今日はごめん!」 「……また、誘うわ。今度はご主人様がいない時にな」 「俺のいない時に、龍太郎にちょっかい出すのやめてくれ」 「無理。俺、わんこのこと気に入ってっから」 そう言いながらオレの頭をひと撫ですると、ゆーとは手を振りながら去って行っちゃった。 あ、ゆーとに頭撫でられるのも嫌いじゃないかも。 「…………」 「わわ?」 突然、けーくんがオレの頭を撫で回して、そしてオレの腕を引っ張った。 「スフレ作るから、一緒に帰るぞ」 「! うん!!」 「っ、こら。後ろから抱き着くの、禁止だって!」 「えへへ、けーくんの背中好きー」 「……はいはい」 今度はため息を吐いただけのけーくんの背中に、思い切り懐きながらオレたちは帰ったのでした。 「けーくん! このスフレ美味しー!!」 「あぁ、ほら。食べカス、口につけて……」 「うへへ。ありがとー」 「どういたしまして…………本当、だから犬呼ばわりされるんだな」 「犬? オレ?」 「……いっそ、首輪つける?」 「え!?」 「あぁ、嘘嘘。冗談」 そうやって笑うけーくんの目は笑ってませんでした。 END!
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