I want you to see only me.

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辛い。 苦しい。 君の視線が、僕を見ないだけ、それだけで吐きそうで呼吸も出来ない。 僕だけを見て。 でも言える訳がない。 気付かないで。でも気付いて。 僕は君の"友達"という立場がすごく好きで、この関係を壊したくない。 でも、君の視線を独り占めしたくて。 「それで、浅沼がさぁ」 君の口からよく出る名前。 僕と君の間にひょっこり入って来た、転校生。 明るくて純粋で、誰からも愛されそうな笑顔の、浅沼と言う名前の、転校生。 そんな奴の名前が、君の口から出る度に、眩暈がする。 聞きたくない、聞きたくない。 何で君の口から、他の人間の名前が出なきゃならないんだろう。 嫌だ、気持ち悪い、不愉快。 嫉妬で気持ち悪くなるのを悟られないように、僕は笑顔を張り付けて笑う。 「浅沼くんって、面白そうな人、なんだね」 「そう、めっちゃ面白いんだ。亨も一回会って話してみろよ。多分、仲良くなれるって」 会いたくもない。仲良くなんて出来るはずもない。 でも、君の笑顔が見れるなら、僕は我慢する。 「亨、具合悪い?」 「え……そんなことないよ?」 「でも、何か元気なくない? あ、浅沼の話ばっかしてるから、つまんない? ごめんな、気付かなくて」 「…………」 あぁ、君は。 君の優しさが愛おしい。 その気遣いが僕は嬉しくて嬉しくて。 だから、君を独り占めしたくなってしまう。 君が、あの転校生と仲良く歩いてる姿を見かけた時、僕の中に気持ち悪い感情を駆けたのを、知られたくない。 いや、知って貰いたいのかも知れない。 何で。どうして。 君の隣は、僕が。 彼じゃなくて、僕が。 何で何で何で何で。 嫌だ、何で、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。 吐きそうになる。 あぁ、どうしよう。 君の視線が、どうして彼に向いてるの? どうして僕じゃ、駄目なの? わからない。 どうしたら、君が僕を、僕だけを見るのかがわからない。 僕の方が君を愛してるのに。 こんなに愛してるのに。 どうして僕を見てくれないのだろう。 あぁ、そうか。 彼が、あの転校生がいるから、君は僕を見てくれないんだ。 他の人がいるから、君は僕を見てくれないんだ。 だったら、と。 歩き出した僕を、誰も止める人なんていない。
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