I want you to see only me.

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「と、亨……?」 「ごめんね」 「あの、これ……は」 「うん、ごめんね」 戸惑う君に、僕はひたすら謝る。 でも、そんな表情も、僕は好きだと思う。 「謝ってる、だけじゃ……わからない、って。なぁ、亨」 「うん」 「オレ、亨の家に、遊びに来たんだよな……?」 「そうだよ」 「じゃあ、これ……何」 君は不安げに両手を不自由にする手錠を睨んだ。 僕のベッドに括り付けた手錠。 「だって、こうでもしないと、君は僕を見てくれないから」 「……何、」 「僕は君しか見てない。君しか見えない。でも、君は僕だけを見てくれないじゃないか」 「は……何だよ、それ」 「嫌なんだ。君が他の人間を見るのも、話すのも、名前を呼ぶのも、側にいるのも、全部、全部吐き気がする」 そう言いながら君の目を覗き込めば、その瞳には僕しか映していないことに優越感がいっぱいになる。 「僕だけ、僕だけを見てれば良いんだ。僕の愛だけを受け取れば良いんだ。君は、僕の物になれば良いんだ」 「……と、亨」 「好きだよ、大好きなんだ。愛してる。こんなに愛したのは、生涯で君だけでいたい。だから」 「亨!」 「何?」 叫ぶ君に、僕は甘く微笑む。 一切目を逸らさないで、真っすぐ僕を見てくれる。 嬉しい。 「これ、外せよ」 「駄目だよ。外したら、僕の前から逃げるじゃないか」 「逃げない。約束するから、外せよ」 「……わかった」 手錠に鍵を入れて外したら、僕の背中は温かさに包まれて。 「馬鹿だよ。亨は馬鹿だ」 「え、と……?」 「オレが、いつ亨見てないなんて言った? 馬鹿。本当馬鹿」 温かい。 これ、は、もしかして。 目の前で間近にいる、愛おしい君。 どうして、君は。 「亨のはやとちりのせいで、暴露する羽目になったけどな! オレはずっと、ずーっと亨が好きなんだ!」 「…………え?」 「何が、僕だけ見ろ、だよ。お前しか見てないっての」 「え、え……ちょっと、待って?」 「待たない。お前、いつも平気な顔してるからさ。だから、浅沼の話とかして、オレに意識させよーと思ってたの。あぁもう、恥ずかしい……でも、両想いか」 「っ、」 呟いた一言を聞いた瞬間、君を腕の中に抱きしめたら、小さく笑われた。 あぁ、僕は幸せです。 君の視線を、独り占めに出来るんだから。 END.
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