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「パァ~パ~…」
いかにも不機嫌そうな少女、晴香の呼びかけで、真夏のもたらした熱気から意識を取り戻す。
…単に、昼寝をしていただけだが。
「…冷やし中華が食べたいよぉ~」
仰向けに寝る俺に跨って座る晴香は、団扇を全力で振りながら訴えてくる。
…いくら小学一年生でも、女の子はもっとおしとやかにするべきだ。
短パン・Tシャツ姿で、間もなく成人を迎える青年男子に馬乗りすべきではない。
「ねぇ~…パァ~パァ~…」
あまりの熱気と気だるさから、はしたない幼子を諭す事も出来ず、俺はその訴えを無視して目を閉じる。
「…連れてってくれないなら、ワタルさんに頼むもん」
その呟きに、俺は電光石火の動きで立ち上がる。
もちろん、愛しい娘は肩に載せている。
「よし!メッチャ美味い冷やし中華を食べに行くぞ!!
晴香、すぐに準備しろぃ!」
その反応に一瞬目を丸くした彼女だったが、すぐさま額に手を当てて「了解です、パパ!」とおどけてみせた。
ある、夏休みの一日だった。
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