6376人が本棚に入れています
本棚に追加
「いつになったら着くんだ……」
俺はそうぼやきつつ、車窓から外を眺めた。
もう何時間も似たような景色を見続けているような気がする。辺り一面に広がる荒野に、そのさらに向こうには、木々が生い茂る森がある。人は全然おらず、俺を乗せた列車は殺風景なレールの上を走っていた。
――外地。それは、魔獣がはびこり、賊が闊歩し、ある意味無法地帯と化した大地だ。村など人が住む集落はあるが、それでも住みやすい場所だとは言い難い。なので、人は基本的に内地と呼ばれる都市内に住んでいる。都市は魔獣が入ってこないように大きな外壁に囲まれており、やつらが侵入出来ないような造りになっていて、そのおかげで俺達人間は安全な暮らしが出来るのだ。
「ヒマいな……」
ずっと座りっぱなしだったせいで尻は痛いわ、列車内だからやることなくてヒマいわで脱力感が尋常じゃない。長旅はさすがに疲れるな。
「ロアはヒマなんですか?」
「まあ、な。だってもう何時間も座りほうけてるんだぜ? アトはヒマじゃないのか?」
俺は隣の席に座っている幼女、アトに問い掛けた。
「アトは全然平気ですよ? だって、ロアと一緒ですから」
「そ、そうか……」
満面の笑みでそう言われると……さすがに照れるな。
「それに楽しみです! 今まではお仕事ばっかりでしたから!」
「だな。まさかマスターが直々にこんなこと言ってくるとは思いもしなかった」
そう、俺が所属しているギルドのマスターはこう言ってきたのだ。若者なら若者らしく学院に通え、と。
俺のように18歳になったら、より高ランク武芸者を目指したりする場合、学院に通うのが普通だ。
だが、俺はちょっとしたイレギュラーな力のせいで、既に上位ランクであるSランクの武芸者証を持っている。
最初のコメントを投稿しよう!