621人が本棚に入れています
本棚に追加
千絵が言ってるのは、こんな格好で一人で戻り、もし坂本がヘマをして途中で斬られでもすれば自分が疑われる。
ということだった。
それはただの口実で、本当は別の狙いがあるのだが…。
とにかく、千絵も坂本も一歩も退かなかった為、結局二人で長州藩邸に行くことにした。
「しかし、どうして薩摩が長州の者を斬ったんじゃろうか?」
遺体を背負う坂本が、無意識に口にした。
「まあ、断定はできないですが…」
この時期、長州と薩摩は友好関係にあり、同じ尊皇攘夷の志の下、お互いに協力していた。
「まあ、それも表向きには…ですよ」
「どういう事じゃ?」
「そうか。坂本さんはご存じないですよね…」
坂本に言うべきか一瞬迷ったが、千絵はまだ、坂本の事を剣術家としてしか知らなかった為、気にしないで言う事にした。
「ここだけの話、実は裏で薩摩が会津と手を結んで、長州を京都の政権から追い出そうとする計画があるんです」
「何!?」
突然の告白に驚くあまり、そのまま遺体を落としそうになる坂本。
しかし、なんとか踏ん張った。
「何でじゃ!?
薩摩と長州といや、お互いに支え合う友好藩の筈じゃ!
会津藩が長州を追い出すなら分かるが、何で薩摩が長州を追い出す必要がある!?」
坂本の指摘はごもっともだった。
だが、
最初のコメントを投稿しよう!