覚悟

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「最近の長州はやり過ぎたんですよ。 佐幕派だったら、公卿だろうが誰だろうが天誅の名の下に暗殺する。 その過激さに、薩摩も我慢できなくなったんです」 薩摩は元々、藩主の父で、事実上藩の最高権力者である、島津久光が佐幕派の人間。 その人間の下で藩を勤王派にもっていくのは並大抵の事ではない。 故に、薩摩の西郷隆盛や大久保利通は、幕府が弱りきってもう何の力も無くなるその時まで、じわじわと幕府の力を削ぎとっていき、一気に政権を獲得する瞬間を狙っている。 しかし、そこで長州が邪魔になった。 長州は、先程もいったように、過激な行動が目立つ。 そんな長州に、いつまでも友好な姿勢を見せていては、佐幕派の久光に咎められる。 「だから、いっそのこと長州を京都から追い出してしまおう。 そう、考えたんです。 そして自分たちは、あくまでも佐幕派の姿勢を見せて、一斉蜂起の瞬間を待つ。 多分、その長州のお武家の方は、そんな薩摩の動きを探りとろうとして、殺された。 大方、そんなところでしょう」 「ほう…」 千絵の演説に、坂本はただ目を丸くする事しかできなかった。 とても信じられない事ではあったが、千絵が語ると現実味がある。 それと同時に、 (この娘は、どうしてそこまで知っているのか…) と思った。 お登勢に、 「あの子には、人に言えない過去がある」 と言われてから、坂本は千絵の身の上を聞こうとしなかった。 その為、千絵のことで知っている事といえば、 江戸で道場の師範代をしていた。 事と、 その道場の師範、千絵の師匠が亡くなった為、道場が潰れて路頭に迷ってる。 という事しか知らない。
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