621人が本棚に入れています
本棚に追加
「最近の長州はやり過ぎたんですよ。
佐幕派だったら、公卿だろうが誰だろうが天誅の名の下に暗殺する。
その過激さに、薩摩も我慢できなくなったんです」
薩摩は元々、藩主の父で、事実上藩の最高権力者である、島津久光が佐幕派の人間。
その人間の下で藩を勤王派にもっていくのは並大抵の事ではない。
故に、薩摩の西郷隆盛や大久保利通は、幕府が弱りきってもう何の力も無くなるその時まで、じわじわと幕府の力を削ぎとっていき、一気に政権を獲得する瞬間を狙っている。
しかし、そこで長州が邪魔になった。
長州は、先程もいったように、過激な行動が目立つ。
そんな長州に、いつまでも友好な姿勢を見せていては、佐幕派の久光に咎められる。
「だから、いっそのこと長州を京都から追い出してしまおう。
そう、考えたんです。
そして自分たちは、あくまでも佐幕派の姿勢を見せて、一斉蜂起の瞬間を待つ。
多分、その長州のお武家の方は、そんな薩摩の動きを探りとろうとして、殺された。
大方、そんなところでしょう」
「ほう…」
千絵の演説に、坂本はただ目を丸くする事しかできなかった。
とても信じられない事ではあったが、千絵が語ると現実味がある。
それと同時に、
(この娘は、どうしてそこまで知っているのか…)
と思った。
お登勢に、
「あの子には、人に言えない過去がある」
と言われてから、坂本は千絵の身の上を聞こうとしなかった。
その為、千絵のことで知っている事といえば、
江戸で道場の師範代をしていた。
事と、
その道場の師範、千絵の師匠が亡くなった為、道場が潰れて路頭に迷ってる。
という事しか知らない。
最初のコメントを投稿しよう!