覚悟

10/34
前へ
/591ページ
次へ
「たのもー!たのもー!」 藩邸の門の前に立ち、声を上げる。 すると、中から門番が格子ごしに声をかけてきた。 「どなたですか?」 夜の訪問の為、門番も少し警戒しているようだ。 「すまん。ワシは土佐の坂本龍馬という者じゃ。 そこで、この男の遺体を見つけてのう。 こやつは、長州の者で間違いないか?」 言うと、坂本は背中をひねって、坂本の影になって門番からは見えなかった男を見せると、 途端に門番の顔色が変わった。 「あっ!? 少々お待ちください!!」 そう言って、藩邸の中に入る門番。 千絵と坂本は二人、門の外で置いてけぼりにされている。 「どうしたんでしょうか?」 「さあの…」 二人が拍子抜けして待ってるうちに、藩邸内はにわかに騒ぎ出している。 「何か…嫌な予感がするんですが…」 「確かに…」 そんな会話をしていると、門が開かれた。 「まあ、これでようやく遺体を引き渡せますね」 「そうじゃの」 「引き渡したら、早く寺田屋に戻りま…」 門から入ると、そこには何だか殺気ただよう長州藩士数名がいた。 その中の一人が、千絵たちに話しかける。 「遺体を運んでいただき、感謝します。 ささっ。どうぞお入り下さい」 笑顔でそう言いながらも、その藩士にも殺気がただよっているのが分かった。
/591ページ

最初のコメントを投稿しよう!

621人が本棚に入れています
本棚に追加