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「たのもー!たのもー!」
藩邸の門の前に立ち、声を上げる。
すると、中から門番が格子ごしに声をかけてきた。
「どなたですか?」
夜の訪問の為、門番も少し警戒しているようだ。
「すまん。ワシは土佐の坂本龍馬という者じゃ。
そこで、この男の遺体を見つけてのう。
こやつは、長州の者で間違いないか?」
言うと、坂本は背中をひねって、坂本の影になって門番からは見えなかった男を見せると、
途端に門番の顔色が変わった。
「あっ!?
少々お待ちください!!」
そう言って、藩邸の中に入る門番。
千絵と坂本は二人、門の外で置いてけぼりにされている。
「どうしたんでしょうか?」
「さあの…」
二人が拍子抜けして待ってるうちに、藩邸内はにわかに騒ぎ出している。
「何か…嫌な予感がするんですが…」
「確かに…」
そんな会話をしていると、門が開かれた。
「まあ、これでようやく遺体を引き渡せますね」
「そうじゃの」
「引き渡したら、早く寺田屋に戻りま…」
門から入ると、そこには何だか殺気ただよう長州藩士数名がいた。
その中の一人が、千絵たちに話しかける。
「遺体を運んでいただき、感謝します。
ささっ。どうぞお入り下さい」
笑顔でそう言いながらも、その藩士にも殺気がただよっているのが分かった。
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