覚悟

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「千絵さん。気のせいか知らんが、何だかこやつらは怒っとるような…」 「怒ってるというか、殺気だってるんでしょう…」 目の前の藩士たちに聞こえないように、小声で話す二人。 できれば遺体を引き渡した後、すぐに戻りたかったが、この状況で目の前にいる長州藩士の誘いを断ったら、 (その瞬間に、首と胴が泣き別れるな…) という雰囲気だ。 長州からすれば、一応坂本と千絵の身元の確認をする必要があった。 もしかしたらこの二人が下手人である可能性もあるからだ。 でも、それにしてはずいぶん威圧的な感じがした。 そんな事を思っていた時、ふと坂本の頭に巻かれた包帯に目がいく。 「あ゛ぁっ!!」 「どうした千絵さん? 大声で奇声なんて上げよって?」 「奇声なんて失礼なっ! って、今はそんな事よりも!」 そこまで叫ぶと、坂本のみならず、長州藩士も突然大声をあげた千絵に注目している事に気づいた。 慌てて小声で話し始める。 「坂本さん。私たちはどうやら、下手人に思われてる可能性があります…」 「えっ?何でじゃ??」 「いや、自分の顔を鏡で見て下さいよ。 って、私もか…」 二人は昼間、お龍にボコボコにされた顔をお互いに見る。 何だかどう見ても、ついさっき殴りあいの決闘をしてきた顔にしか見えない。 「はは。それで、疑われとる訳か…」 「マズイですね…」 そのまま、意気消沈する千絵。 しかし坂本は、そんな千絵とは対照的に、この状況でも全く動じていなかった。
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