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吉田はもう刀の鯉口を切っており、坂本もいきり立っている。
「坂本殿、どういう事かご説明いただけますか…?」
丁寧な口調とは裏腹に、吉田からの殺気がすごい。
「だから、ワシはただ、勝先生の下で外国の事を学んだりしとるだけじゃ!
それより、勝先生を奸物って言った事を謝れ!!」
一方坂本は今にも掴みかかりそうな勢いで、そんな吉田の神経を逆なでするような事を言っている。
「坂本さん!
落ち着いて!!」
千絵はそんな坂本の後ろから、坂本の両脇に腕を通して、なんとか抑えている。
「ん?そういえば、お前は誰だ?」
吉田の横から、事の発端を作り出した張本人が千絵に話しかける。
「私は小林千絵って者です。
それより、坂本さんも吉田さんも堪えてください!」
中岡の態度に半分キレながら言い、それでも坂本を抑えつける千絵。
「小林…千絵…」
この状況で、中岡は修羅場直前の二人を止める気はなく、それよりも千絵の名前を気にしていた。
「坂本さん!
私らはここに喧嘩しに来た訳じゃないでしょう?
吉田さんも、聞いてください」
坂本の後ろからそう言うと、何とか二人の目が千絵に向いた。
千絵が坂本から手を離し、横に座り直すと、二人も渋々座り直した。
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