覚悟

18/34
619人が本棚に入れています
本棚に追加
/591ページ
「吉田さん。 私たちはこんな格好ですが、下手人ではありません。 私たちはただ、泊まっている宿の近くであの宮原さんを見つけて、ここに届けただけです」 「証拠は?」 「証拠…ですか?」 「ああ」 やはり吉田は、千絵と坂本が下手人だと思いこんでいたようだ。 「まあ、吉田さん。 話を聞くと、宮原さんは刀傷しかなかったんでしょう? だったら、二人の刀を見ればいい。 もし、斬ったのがこいつらだったら、刀に真新しい血曇りがあるはずだ」 吉田の言う証拠が思い当たらない二人に、今まで二人の身を死地に追い込むことしかしなかった中岡が、何故か助け船を出してくれた。 「中岡さん…」 「中岡…おんしやはり…」 中岡の意外な一面に、少し感心する二人。 「そうか。それもそうだな」 吉田もその案に納得した為、二人はそれぞれの刀を差し出した。 坂本の刀は当然新品同様の代物で刃こぼれひとつない為、すぐに疑いは晴れた。 そして千絵の刀も、 「何だ、女子が何を持ってるのかと思えば鉄刀か…」 と、吉田が言った為、このまま帰れそうだ。
/591ページ

最初のコメントを投稿しよう!