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「吉田さん。
私たちはこんな格好ですが、下手人ではありません。
私たちはただ、泊まっている宿の近くであの宮原さんを見つけて、ここに届けただけです」
「証拠は?」
「証拠…ですか?」
「ああ」
やはり吉田は、千絵と坂本が下手人だと思いこんでいたようだ。
「まあ、吉田さん。
話を聞くと、宮原さんは刀傷しかなかったんでしょう?
だったら、二人の刀を見ればいい。
もし、斬ったのがこいつらだったら、刀に真新しい血曇りがあるはずだ」
吉田の言う証拠が思い当たらない二人に、今まで二人の身を死地に追い込むことしかしなかった中岡が、何故か助け船を出してくれた。
「中岡さん…」
「中岡…おんしやはり…」
中岡の意外な一面に、少し感心する二人。
「そうか。それもそうだな」
吉田もその案に納得した為、二人はそれぞれの刀を差し出した。
坂本の刀は当然新品同様の代物で刃こぼれひとつない為、すぐに疑いは晴れた。
そして千絵の刀も、
「何だ、女子が何を持ってるのかと思えば鉄刀か…」
と、吉田が言った為、このまま帰れそうだ。
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