覚悟

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だが… 「あ、そういえば。 こいつらの刀に血曇りや刃こぼれ一つなくても、斬った刀を捨ててたら意味ないな」 と、中岡が横から言ってきた。 「おい中岡っ! おんしは一体どっちの味方じゃ!?」 「は?何を言ってんだ坂本。 俺はただ、可能性がある話をしているだけだが」 一体この人は、何をしたいんだ…。 「ちょっと中岡さん。 言いがかりはよして下さいよ。 大体、なんで私たちがそんな事をする必要があるんですか? それに、私たちが下手人だったら、わざわざ長州藩邸に遺体を運ばないと思いませんか?」 二流三流の言い訳と分かっていたが、今の千絵に言える唯一の反撃をしてみた。 まあ、それを言われたら、相手は何も言えなくなるので、それを狙って言ったのも事実ではあるが…。 見ると、吉田が 「それもそうか…」 という反応をしていた。 しかし、そんな時に中岡は… 「そういや、この前土佐の岡田以蔵をやったのは、女剣客だと聞いたな」 と言った。 たちまち、吉田の殺気が千絵に向いた。 「しかも、その女剣客の武器は鉄刀だって聞いたな」 …………………終わった。 この、目の前にいる土佐人…坂本の知り合いの土佐人は、結局二人を追い込むだけ追い込んで、憎ったらしい微笑みを浮かべている。 後は、どうやって長州藩邸から生き延びて帰れるかを考えるだけになってしまった。
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