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「土佐勤王党ですか?」
「分かるか?」
「ええ。今のが遅いと思ったくらいですよ」
「ほう?」
岡田以蔵といえば、今…はどうか知らないが、土佐勤王党でも大物の部類に入る人と聞いた。
そんな人間がこんな小娘にやられたのだから、勤王党にとっては酷い失態のはず。
当然、報復に来るものだとこの二週間気を張っていたが、その気配すらなかった。
「なんで、半月も手を出さなかったんですか?
まさか、私の居場所がつきとめられなかった訳じゃないでしょう」
刀を持って千絵のような娘が出歩けば、いくら何でも目立つ。
だからこそ、千絵はあえて刀を持ち歩いていたのだが…。
「ふ…ははははははっ!」
千絵の問いに、何故か笑い出す中岡。
「何か、おかしな事を言いましたか…?」
目の前のこの男の真意が分からない。
報復に来たのならさっさと殺せばいいのに、何だかそんな様子が感じられない。
千絵がそんな疑問を抱いていると、中岡が話始めた。
「ふん。あの岡田に高説たれた奴が、どんな馬鹿かと思えば…。
意外とまともな考えができるじゃねえか」
「は?」
「いや。それより、お前に聞きたい事がいくつかある」
「聞きたい事?」
「ああ、そうだ」
中岡は下げていた刀を鞘に納めながら言った。
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