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そう言って中岡は、懐から紙を取り出すと、千絵に手渡した。
「これは?」
「丹虎っていう料亭までの地図だ。
この国の行く末に少しでも興味があるなら明日の正午、ここへ来い」
「は?」
中岡の言いたい事が見えてこない。
「話を聞くかぎりでは、お前の時勢に関する知識は確かなものだ。
まあ、会津人でしかも女ってのが厄介ではあるが…」
言いかけて、千絵の姿を見る。
「訛りも目立たんし、刀持ってるから大丈夫か…」
そう言いつつ、中岡は千絵の顔と胸、それに指先を残念そうに見ていた。
「はっきり、女らしくないって言っていいですよ」
「そうだな…」
確かに千絵は、手には竹刀だこ、胸は毎日のようにサラシを巻いていた為成長せず、顔は…ご想像にお任せします。
「しかし、どうして土佐勤王党のあなたが、私にそんな話を?」
今までの話で、中岡は明らかに土佐勤王党の一人だと分かった。
この前千絵がのした岡田も、土佐勤王党の一人だ。
目の前にいる男には、千絵の命を奪う必要はあっても、生かしておく必要はない。
そんな疑問を抱いていると、中岡がそれを解いた。
「言っておくが、土佐勤王党はお前の命を狙ってはない」
「え?
どうしてですか??」
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