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そうして下に落ちたホコリも箒で集めて捨てれば、ある程度は綺麗になった。
それから、窓や食器棚のガラスの部分をキレイな雑巾でピカピカになるまで磨いて、その後洗った雑巾で床やら壁やらを丁寧に拭いていく。
熱中すると意外と周りが見えなくなるものだ。
まるで見違えるくらい綺麗になったかと思えば、日はもう傾きかけた四時頃になっていた。ふと外の空気を吸いに外に出ると庭の草がボーボーなことに気づき、草刈りを始めた。
それから二時間後のことだった。日はまさに地上から姿を消そうとして、あたりを真っ赤に染め上げていた時間。
ジャンは空に人影を見た。見間違いとも思い、目を擦ってもう一度見ると、遥か上空に先ほどよりも大きくなった人影が浮かんでいる。
というよりは落ちている。のに気づいたジャンは、
「あ~~~、あわわわ、あわ、あぁぁ~~~~!!」
と慌てて右へ左へと足をバタつかせて、どうしたらいいか分からずにいる。と、その人影はドスンッと音を立てて、先程集めた雑草の上に器用に落ちた。
その姿は、目鼻立ちのはっきりしたまるで別世界のような大人っぽい人で、純白の制服のような格好は頭や体から出た血で、所々が真っ赤に染まっていた。
彼はいわゆる全身血まみれだった。なのに、目立った傷もなくて、ジャンは医者を呼ぶのをやめた。
しかし、このままではいけないとだけ思い、意識のない男を引きずって小屋の中に入れると、血を拭き、丁度小屋にあったお祖父さんの服を男に着せた。
この血は誰のだろう?と思いながらも、白い制服を手洗いしたジャンだが、服に付いた穴の空き方などなどからして、やはりこの男の血なのだろう。
でも、この男には傷ひとつなかった。
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