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どうして傷がないのかと疑問に思っているジャンをよそに、男を寝かしていたベッドがモソモソと動いて、ジャンは肩を震わせた。
と同時にその男もビクッと驚き、さも警戒したように、この世のものとは思えぬ二重か三重ほどに重なった声で、
「何者だ?」
とジャンに問いた。するとジャンは、
「お、俺か?俺はジャンだ。」
宜しくな。と言う前にその男から再び、
「ここは?」
と質問が飛ぶ。
「ここは俺の祖父ちゃんち。」
「なぜ?」
未だに警戒心の解かれない男からは、張り詰めた緊張感しか伝わって来なかった。それにドギマギとするジャンは、
「そんなの知らねぇよ。お前が空から降ってきたら、血まみれだし、どうしたもんかと、わかんねぇ。」
とさすがは小学生という感じの答えを呈した。しかし今の状況。
男は、察するに助けられたのか、と理解した。
「ありがとう。え、と…ジャン。」
と今度は一重(ひとえ)の優しい声を出せば、ジャンは本当に怖かったと泣き出してしまった。さすがは小学生といったところだろうか。
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