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悪魔が現世に行くことはあっても、天使が行くことは滅多なことじゃなくて、ルシファーが少し現世について興味があったことは、本人以外知る由もなかった。
天使は昼に羽を広げ、夜には悪魔が羽を広げる。それが天使と悪魔の均衡で、天使のいる天界にはほぼ昼しかなく、悪魔のいる地獄にはほぼ夜しかなかった。
その中間にある現世には昼も夜も存在しているから、天界の者が、はたまた地獄の者が現世に手を出せることは一日の半分ずつしかなかった。
ルシファーは堕天したとはいえ、地獄には堕ちず現世にとどまった為に、未だ天使としての力は失われていなかった。その為、昼間になれば大きな十二枚の翼を悠々と広げることが出来た。
昔はその翼でもって空を飛ぶことも出来たのだが、今はその半分が見た目にはわからないが折られてしまったために、少し飛ぶことはできても、今まで通りとはいかなかった。
十二枚の翼はその一枚一枚が純白で、誰にも汚すことの出来ないオーラ、つまりは光を放っていた。それは太陽ともとれるほど、神々しい光だった。
ルシファーはその光り輝く翼をしまい、小屋の外へと出る。
そこに干してあったのは、昨日まで自分が身に着けていた神の側にいるにふさわしい制服。その制服の穴を天使の力によって塞ぎ、少し残ってしまった血の跡も消してしまうと、数時間ぶりにそれを羽織った。
やはり、この服が一番しっくりくると、自嘲した。
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