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「いや、何もわからないんだ。例えばこれは?」
と聞いた物は、白いお皿。
「それはパンとかお肉を乗せるお皿だよ?」
「パン?」
天界にも銀でできたお皿があったから、それについては何の疑問を持たなかったのだが、パンは初めて聞いたようだった。
「パンはパン。今度持ってきてあげるよ。」
しかし本当に何も知らないんだなぁ。
とジャンは言いながら、もしかして記憶喪失ってやつなのかな?と考えを巡らせていた。
ずいぶん高いところから落ちたのだから、記憶喪失と思ってもおかしくはなかった。
そしてジャンは、
「あ、今日はもう帰らなくちゃ。」
と、手を振ってセカセカと帰ってしまった。その後ろ姿を眺めてジャンが見えなくなると、またいすに座って眠ることにした。
ルシファーは外出もせずに一日中小屋の中にいたのだが、小屋の中には、お祖父さんのものと思われる本が何冊も置いてあったから、意外と暇にはならなかった。
その中の「野菜の栽培」という本に、ふと目が止まりそれを開けていた。
そこには事細かに野菜の育て方が載っており、土の作り方から水のあげ方まで載っていた。ルシファーは早速、小屋からスコップを取り出し、誰も来ない広々とした庭に畑を造ってみることにした。
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