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☆リンゴ☆
「ルキッ!」
目を輝かせてそう叫ぶのは、もう使い古されたつぎはぎが目立つシャツを着て、少し丈の短くなってしまったズボンをはくジャンという少年。
小学五年生の彼は、ふわりと少しクセ毛のきいた髪で、切れ長というよりはくりくりと丸い目を輝かせていた。
「やぁ、ジャン。また来たのかい?」
そう答えるのは、ルキと呼ばれた青年だった。するとジャンは、茶色い紙袋をガサガサさせて赤くて丸い物を取り出すと、
「うん!あのね、今日はねリンゴを持ってきたよ。」
と言ってルキに差し出した。そのリンゴと言われた造形物を手に取ると、不思議そうに、
「リンゴ‥かい?」
と言った。ただの赤いリンゴもジャンにとっては高価なものだったが、ルキはたいそう物珍しそうに観察し始めた。
ルキは、どこか遠い国の軍隊長の着ているような白い制服を着ていた。肌も健康的な白さを持っていて、日の光のように輝く金色の髪を肩まで伸ばした姿は、神か仏を思わせた。
そこから生まれる優しい顔は、それでもどこかここぞで有無を言わせぬような眼力を持ち合わせていた。
そんなルキが、
「そうか、これがリンゴというのか!」
と興奮を露わにして言えば、ジャンは、
「ルキは本当に何も知らないんだなぁ。」
アハハと笑ってそう言った。
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