龍臥、北町に見参

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(うわっ。ありゃ痛ぇぞ…) 蹴られてもないのに思わず龍臥も股間を押さえて共感してしまった。 フゥーッ… 止めていたかのような長い息を吹き切ると、流華は赤茶色の綺麗な髪を片手でかきあげ、龍臥の方へ視線を投げる。 『あ…ありがとネ』 初めて見る流華の笑顔には、さっきまでの形相が嘘のように消えていた。 『お…おぅ』 照れ臭そうに短く返事を返すと、思い出したかのように流華に問い掛けた。 『あ。あのさ、今日から俺この町に越して来たんやけど…北町上地区三丁目ってどないして行ったらえぇんかなぁ?』 『え?北町上地区に引っ越して来たの?アタシも上地区だよ。』 嬉しそうに流華が言うと、龍臥の前まで歩み寄りまじまじと覗き込んで来た。 さらさらとした風に乗って風呂上がりのような良い香りが流華の髪から微かに感じ取れた。 『右も左もわからないっしょ?助けてくれたお礼も兼ねてアタシが案内してあげるネ』 そう言うと流華はついてくるように促し、コンビニを北の方角へと歩き出した。 『あ…あのさ。さっきのみたらし団子三兄弟みたいなのはなんなん?』 沈黙に耐えきれず龍臥が流華に歩きながら声を掛けた。 『あははは。みたらし団子三兄弟って…ウケるんだけど(笑)』 龍臥の方を向きながら流華が満面の笑みで笑い出す。 『あいつ等は北町下地区を縄張りとしてるデススターってチームなの。恐喝、傷害、窃盗、強姦、引ったくりや強盗なんでもありのイカれた奴等でさ。頭領の福沢以外はみんなスキンヘッドで、センス無いマークの入った皮ジャン着てるのが特徴かな。』 まだウケているのか、笑いを堪えながら流華が続けた。 『そのデススターの頭領やってる福沢がアタシに女んなれ女んなれってうるさくて…。あーぁ、さっさとブルーバードと潰し合って両方消えちまえばいいのに…』 『ん?ブルーバードってのは?』 『あ。ブルーバードは北町上地区エリアを縄張りにしてるホスト系チーム。みんなスーツ着てて髪の毛はロン毛の金髪ばかりでチャラチャラしまくってるのが特徴で、ドラッグ、盗品売買、筒持たせやオヤジ狩りとかもして、女食い物にしてるムカツク奴等なの』 『ふぅん…。ほなその二つのチームがぶつかり合ってるんやぁ…』 龍臥は遠くを見つめて考え込みながらズボンのポケットからタバコを取り出してくわると、ライターで火を点けた。 北町の夕陽が沈みかけている。
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