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…どれくらい歩いただろう…
歩きながら二人は沢山の言葉を交わし、いつしか互いに親しみを感じていた。
右も左もわからぬ龍臥にとって、流華との出会いはとても貴重に思え、それと同時に新鮮な感覚に浸っていた。
そんな流華の足がT字路で止まり、赤茶色の髪をなびかせて龍臥の方へ振り向いた。
『ここを右に進めば上地区三丁目だょ♪アタシは二丁目だから左に行くけどネ』
T字路の中心部から左方面を指さしながら流華が言うと、龍臥はその白くて細い指がさしている方角へと視線を向けた。
『ほなこの道を真っ直ぐ行けばえぇんやな…。道案内わざわざありがとな』
流華に礼を言うと龍臥は照れ臭そうに手を差し出した。
『えっ…』
突然差し出された手に一瞬目を移した流華は、キョトンとした目で再び龍臥を見た。
『俺…龍臥。よろしくな』
その言葉にニッコリ微笑んだ流華は、差し出された龍臥の手を握った。
『アタシは流華。今日は助けてくれてありがとネ♪』
笑顔でそう伝え、手を放した流華は龍臥を背に走り出した。
30メートルほど離れたところで突然足を止めた流華が振り返る…
『ねぇ!!きっとまた会えるよネ!!』
ドクンッと波打つ心臓を誤魔化すかのように頭を掻きながら流華に向かって微笑み返した。
『おぅ!!必ずな!』
流華は小さくうなずくと大きく手を振って、再び龍臥に背を向けて走って行った。
その流華の後ろ姿を見えなくなるまで見送った龍臥は、三丁目方面へと歩き出した。
いつしか陽は沈み、周りが薄暗くなるとジジジッと音をたてながら町の街灯がちらほら点き始めるのだった…。
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